イラン革命が起きた今から30年前。1979年という年は実に大変な事が立て続けに起こった。長い髭のホメイニ師の顔が米紙「タイムズ」の表紙に登場したと思いきや、同年11月には、堅固なことで知られるイスラム教ワッハーブ派の牙城サウジで、過激派が聖地メッカを占拠する事件が発生。暮れも押し迫った同年12月27日には、ソ連軍戦車が怒濤のごとくアフガンに攻め入る。
その一方で、イスラム革命の動乱の最中にあったテヘランでは1979年11月、「米帝打倒」を叫ぶ学生らが米大使館を占拠して館員らを人質に取る事件が勃発。444日に及んだこの占拠・人質事件は、カーター大統領が退任し、レーガン新大統領が就任する81年1月20日まで続いた。その間、80年9月22日には、以後8年間続くことになるイラン・イラク戦争が起こっている。
明るい話が皆無というわけではない。1979年3月26日、前年のキャンプデービッド合意に基づき、エジプト・イスラエル平和条約が締結され両国が外交関係を樹立。過去4回にわたる中東戦争の先頭に立ったエジプトが、遂に矛を収めた。アラブ・イスラエル全面戦争の可能性が、限りなくゼロに近くなったのである。1994年には、ヨルダン・イスラエル平和条約が締結され、ヨルダンも矛を収めた。
1975年のプノンペン陥落、続くサイゴン陥落で、第2次大戦後の米世界戦略は、朝鮮戦争を経た韓半島情勢に続き、東南アジアでも大きな見直しを迫られ、続くパーレビ体制崩壊で、中東・南西アジアでも大きくきしみ始めた。米ソ冷戦は依然として続いており、全世界のあらゆる紛争は、いつでも「米ソ代理戦争」に転化し得る可能性があった時代である。レーガン大統領が「悪の帝国」と喝破したソ連邦の崩壊など、誰も考えることができなかった。
さらにタイムスパンを広げると、1982年にはイスラエル軍がレバノンに軍事侵攻してベイルートを占領、パレスチナ解放機構(PLO)を追い出して、PLOの対イスラエル軍事テロの芽を摘んだ。エジプトが脱落し、ベイルートを追い出されたPLOは、以後、長期的に見ればイスラエルとの平和共存の道を探る以外何もオプションは残されなかった。実際のところ、90―91年の湾岸危機・戦争で、イラクに肩入れして総スカンを食ったPLOは、オスロ合意に活路を見いださざるを得なかったのである。
こう見てくると、今も活火山なのは、旧支配政権タリバンの跳梁跋扈するアフガンとその背後に隠れている国際テロ組織アルカイダ、今回の大統領選に続く騒乱で民主化を叫ぶ勢力が皆無というわけではなかったイランぐらいなものか。しかし、イランは、アフガンやイエメンなどと同列の「破綻国家」というわけではない。湾岸戦争では、イランはイスラエルとともに軍事活動を控えた。父親ブッシュが謝意を述べているぐらいだ。
落ち着くべきところに国際情勢が落ち着くためには、相当な時間が必要だ。数年ごとに特派員が入れ替わる日本メディアの国際情勢分析などたかが知れている。
ホメイニ師は鬼籍に入って久しく、宗教界保守派イスラム共和党(IRP)の重鎮の1人として同師を支えたハメネイ師が、最高宗教指導者としてイランの精神的支柱となってからも幾星霜が流れた。初のイスラム革命として世界を驚愕させ、後に在テヘラン米大使館占拠・人質事件を引き起こし悪名をはせたイランだが、そのイランが、12日行われた大統領選の結果を巡り揺れている。
ハメネイ師は19日、今回の大統領選で現職・保守強硬派のアハマディネジャド大統領が再選を決めたあと初めて行われたイスラム教金曜礼拝で導師を務め、「(アフマディネジャド再選は)国民の選択であり、選挙結果を変えることは容認できない」と断言、アフマディネジャド再選の事実を確認するとともに、改革派のムサビ元首相支持派に対しデモ終結を要求した。
テヘラン中心部で行われた金曜礼拝には数万人が参加。ハメネイ師は「街頭行動は、候補者の不当な要求を体制が受け入れるための圧力とはならない。背後にいる(ムサビ氏ら)指導者が結果の責任を負うことになるだろう」と非難し、大統領選で敗れたムサビ元首相支持派の主張を「不当な要求」と断言。今後、革命防衛隊による街頭デモの撤退的弾圧の可能性を示唆した。
要するにハメネイ師は、開票結果を疑問視するムサビ元首相やその支持者を単に批判するばかりで、アフマディネジャド大統領の政権に潜む「腐敗の芽」をどうやって除去するか、もしくは取り除ける可能性があるのかについては全く言及せず。いかにイスラム体制と言えども、改善すべき点はきちんと認めて、改善に努力しなければなるまいに。。。
これまでの段階で、イラン大統領選の開票結果をめぐるムサビ元首相支持派と当局側官憲の衝突は、少なくとも全国11都市に広がり、当局などの弾圧による死者は累計で少なくとも15人になった。ムサビ元首相は17日、声明を出し、選挙無効と再選挙を改めて要求、抗議デモ継続の姿勢を示した。
イランの有力な人権団体によると、南部シラーズでは16日夜(日本時間17日未明)、1万人近いムサビ元首相支持派と警官隊が衝突。当局は市内に外出禁止令を出したが、抗議行動は17日未明まで続いた。中部イスファハンでは、中心部で抗議集会が17日未明まで続き、多数の負傷者と逮捕者を出した。中部ヤズド、西部ハマダンでも負傷者が出た模様。
イランとの対話を大統領選時代から模索しているオバマ米大統領は、困惑の体だ。対話は相手側がしっかりしている時にのみ成り立つからである。が、ともかくも、米上院と下院はともに19日、イラン大統領選の不正疑惑を巡る連日の抗議デモを弾圧しているとして、イラン政府を非難する決議を採択。この決議に拘束力はないが、及び腰のオバマ大統領に対する「圧力」にはなっている。
時は大英帝国を頂点とする欧州列強の植民地主義が全世界を跋扈した時代。英国人ウィリアム・ダーシーは1901年、まさに20世紀が始まった年に、ペルシャ(現イラン)の皇帝から石油採掘の利権を獲得。ダーシーは7年余の試掘を重ね、1908年、ついにイラン南部で油田を発見する。石油利権とその石油利権を巡る各国の抗争のタネが、ここにまかれたのだ。
このとき、ダーシーはアングロ・ペルシャン石油という採掘・供給会社を設立した。これが、現在の石油メジャー、ブリティッシュ・ペトロリアム(イギリス石油、BP)のそもそもの始まりだ。英国は1914年、第1次大戦で使用する燃料確保のため、400万ポンドもの大金を出してアングロ・ペルシャン石油株式の50%以上を獲得、半官営化。この状態は1970年代に完全民営化されてBPとなるまで続いた。
ちなみに、日本タンカー史をひもとくと、1921年(大正10年)に建造された日本初の本格的な民間外航油槽船、「橘丸」が、当時の満州・大連で大豆油を満載してロンドンに赴き、帰路にイラン・アバダンでこのアングロ・ペルシャン石油から8000トンの石油を購入、帰国している。アバダンは、イラン南西部のペルシャ湾に注ぐシャトルアラブ川の東岸に臨む河港都市。イラン革命の火の手は、1978年に最初にここで上がった。のちにイラン・イラク戦争に巻き込まれる。
第1次世界大戦で大英帝国の対枢軸国戦を支え、第2次世界大戦でも英国をはじめとする連合国側の対ナチスドイツ戦を支える大きな要素となった中東石油は、そのまま石油利権抗争史として世界史上に刻まれる。BP、モービル、エクソン、ロイヤルダッチシェル、テキサコ、ガルフ、ソカールのセブンシスターズ(国際石油資本)の手に落ちた中東石油だが、1973年の第4次中東戦争でそのタガが緩み始める。そして1979年のイラン・イスラム革命。前年にアバダンで上がった火の手が、盤石を誇ったパーレビ王政を倒したのだ。
それからちょうど30年。この12日投票の行われたイラン大統領選は、即日開票作業に入り、同国内務省は13日朝(日本時間同日午後)、開票率約90%の段階で、保守強硬派の現職、アフマディネジャド大統領(52)が66%を得票し、改革派のムサビ元首相(67)は33%と発表。イラン国営通信(IRNA)は、同大統領が決選投票を待たずに再選を決めたと報道、大統領陣営も勝利宣言。
アフマディネジャド大統領は、ホロコースト(ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺)否定など対外強硬発言を繰り返し、国連の経済制裁を招いた核開発問題でも交渉を拒否、イランの国際的孤立を深めた張本人。オバマ米大統領は、大統領選時代から核拡散防止条約(NPT)の枠内でのイランの平和的核開発は否定しないとし、イラン核問題の交渉による解決に意欲的だが、はたしてこれが今後どう動いていくのか。
IRNAは5月20日、アフマディネジャド大統領の発言として、イランが同日、射程距離約2000キロの新型の地対地ミサイルを発射実験に成功したと報道。同大統領は「先端技術を持つ『Sejil 2』ミサイルを本日発射した。ミサイルは正確に目標に着弾した」と述べた。IRNAによるとミサイルは東部のセムナン州から発射された。アフマディネジャド大統領は同州を訪れていた。イランの別の長距離ミサイル「シャハーブ3」も同程度の射程距離を持ち、イスラエルをはじめ、湾岸諸国内の米軍基地が射程圏内に入る。
イスラエルのネタニヤフ極右政権は、イラン核をパレスチナ問題を上回るイスラエル最大の脅威として位置付けているが、保守強硬派のアフマディネジャド大統領再選や、ミサイル発射実験の報道などを勘案すると、あながち全否定はできない。
「テロとの戦い」、イラク戦争と「米国の世界認識」をアラブ・イスラム圏に押しつけて極めて評判が悪かったブッシュ前政権に代わり、「新たな関係再構築」を目指して動き出したオバマ米大統領が3日のサウジ訪問を手始めに、4日にはエジプトの首都カイロを訪問、同地のカイロ大学で、「世界のイスラム教徒と米国との新たな(関係の)始まりを求める」旨を骨格とする大演説をぶった。
他方、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは3日、国際テロ組織アルカイダ指導者ビンラディンのものだとする録音テープを放送。このテープは、オバマ大統領がサウジに到着した直後発表されたもので、テープの中でビンラディンとされる人物は、パキスタンでの武装勢力掃討作戦を米国の「命令」と主張、同大統領が「米国への憎しみと報復の新たな種をまいている」と非難。
ブッシュ前政権の対イラク政策を強く非難してホワイトハウス入りしたオバマ大統領だが、「テロとの戦い」に関しては「完遂」することを確約しており、クリントン国務長官ともども、この点では米国の政策に揺るぎはない。ビンラディンが生きていればの話だが、オバマ大統領とビンラディンの最初のジャブの応酬がここに開始されたわけだ。はるか東方では北朝鮮がミサイルをぶっ放すし、剣呑な世界ではある。
それはともかくとして、オバマ大統領はカイロ大学での演説で、インドネシアというイスラム世界で育った自分の体験を踏まえ、互いの差異より共通点に目を向け、「パートナー」として世界の平和と繁栄に責任を果たそうと呼びかけて、「相互の利益と敬意」に基づく関係強化を強調。
その上でオバマ大統領は、中東における米国の強固な同盟国イスラエルによる「パレスチナ人の苦しみが続く現状は認められない」と断言。パレスチナ側に暴力放棄を求める一方で、イスラエルによる占領地でのユダヤ人入植地建設は「受け入れられない」とし、双方に自制と譲歩を要求。
また、占領地の返還などと引き換えにイスラエルとの関係正常化を提示したアラブ側の和平構想(アブドラ・サウジ国王が2002年に初めて提示)を「重要な出発点」と評価。
さらに、イスラエルが極めて危惧するイランの核問題では、イランに対し、核問題などでの無条件の対話再開を呼び掛て「中東での核軍備競争を防ぐ」ことを改めて主張。その上で、同大統領は、核拡散防止条約(NPT)の枠内での原子力の平和利用に関しては、イランがこれを追求することに反対しない旨宣言した。
また、民主主義や女性の権利、言論や宗教の自由などへの強い支持も表明。アラブ各国独自の改善への取り組みを尊重する姿勢を示した。
まあ、このカイロ演説だが、米国の対中東政策を披瀝したというよりも、オバマ大統領自身の、仮に「文明の衝突」なるものがあったとしたら、それをいかに食い止めるかの意欲表明に近い。政治性よりも倫理的、哲学的側面が目立つものだ。「その言やよし。では具体的にどうするのか?」という点が今後とも問われているわけだが、この面では依然として不透明である。
オバマ大統領オバマ政権誕生で、ブッシュ前大統領を支えた米国の政権内にいた共和党系保守派は、極左から極右に転向したネオコン(新保守派)を含め、いずれも野に下った。その中で、反オバマの論客として気をはいているのが父親ブッシュ、息子ブッシュと2代にわたってこれを支えたリチャード・ブルース・チェイニー氏だ。1941年1月生まれの68歳。国防長官として湾岸危機・戦争を克服し、副大統領としてイラク戦争に臨む。ごりごりの保守派だ。
そのチェイニー前副大統領、副大統領時代は一貫して黒子に徹し、決して表に出ることはなかったが、野に下って以降は、メディアに積極的に登場、反オバマの論陣を張り始めた。10日には米CBSテレビの番組に登場し、過酷な尋問方法を使ったとしても、それによって国際テロ組織アルカイダのテロ容疑者から引き出した情報は、「おそらく数十万人の米国民の命う上で役立った」と豪語。水責めに象徴される「拷問系尋問法」を正当化した。
チェイニー前副大統領は、「後悔はしていない。まったく正しいことだったと思っている。容疑者の抵抗を打ち破るために必要不可欠のものだった」と強調。その上で、同前副大統領は、「アルカイダが米国の都市に核攻撃を計画していた」との主張を繰り返すとともに、「数千人、数十万人の米国民の命を救ったと全面的に確信している」と断言。同前副大統領はこの後、21日もワシントンでの講演で、同趣旨の反オバマの論を張った。
このチェイニー・ワシントン講演の直前、オバマ大統領は目と鼻の先のワシントンにある国立公文書館で演説し、グアンタナモ米海軍基地(キューバ)のテロ容疑者収容所閉鎖を公約通り実行することを強調、閉鎖を巡っては、共和党だけでなく民主党内にもも収容者が米本土に移送されることへの懸念を強めている現況に触れた上で、同大統領は、収容所が「自由と正義」に基づく米国の憲法と法の支配を著しく傷つけたと指摘した。
グアンタナモ米軍基地に関しては、前回のニュースで詳しく触れたので再掲はしない。グアンタナモの収容所に収容されているテロ容疑者は現在240人。オバマ大統領は演説で、容疑内容によって1)連邦裁判所での審理2)軍事法廷での裁判3)裁判所の決定による釈放4)本国や第三国への送還―などのケースがあると指摘。いずれの場合でも「容疑者を厳重に警備された施設に移し、米国の国家安全保障にとって危険な人物は決して釈放しない」とチェイニー系の反論に「再反論」。
静かな隠退生活を送っているブッシュ前大統領に対し、昔も今も最も嫌われている政治スタイルを持っているのが、チェイニー前副大統領だ。が、ブッシュ前政権で次席補佐官を務めたカール・ローブ氏を懐刀の1人として抱える同前副大統領の反オバマ論に関し、民主党系の論者が反感を抱くのは当然だが、共和党内でも思いは複雑だ。。「チェイニーが共和党の顔として動くことは、災い以外の何物でもない。彼はただの銃を持った不機嫌な老人だ」という声すらある。
米CNNの21日の世論調査では、チェイニー前副大統領に「賛同する」人は37%に過ぎないが、今年1月から8はポイント上昇している。いずれにせよ、チェイニー副大統領が例え「不機嫌な老人」だったとしても、この「不機嫌」がどこからきているのか、単なる痴呆の前触れか、それとも彼を「不機嫌」と断定する周囲の方がおかしいのか、精査すべきだろう。
チェイニー前副大統領グアンタナモ米軍基地。1898年の米西戦争で米軍がスペインから奪取した現キューバ東南部グアンタナモ湾にある米海軍の基地だ。面積116平方キロ。米国の援助でスペインから独立したキューバは1903年、グアンタナモ基地の永久租借を米国に認可。主権はキューバにあるが、米国が永久的に利用(革命キューバはこれを非合法としている)。キューバ国内でも米国内でもなく軍事法廷のみが許される特殊区域だ。
2001年のアフガン報復空爆以降、タリバンや国際テロ組織アルカイダのテロリスト容疑者が収監されたことで世界的に一躍有名となり、米国の進める「テロとの戦い」の暗い部分を象徴する施設となっている。収監されている連中が一体「捕虜」なのか、それとも「犯罪者」なのか不明なためで、米国のブッシュ前政権、オバマ現政権とも時と場合によって両者を使い分けているのが実情。
が、ともかくもオバマ大統領が、大統領選時代から、グアンタナモ基地や米軍の管理下に当時あったイラクのアブグレイブ刑務所で、米当局がイラク人テロ容疑者を裸にしたり、首に革ひもを巻きつけたりしたいわゆる「虐待写真」なるものが流出したことから、これを「容認できない」として徹底調査を公約に掲げてきたことは周知の事実。ところが人間社会では、厳しい現実を前に建前と本音の乖離が顕在化するのが実際のところで、オバマ大統領とて例外ではない。
オバマ大統領はまず13日、ブッシュ前政権時代にグアンタナモ基地をはじめとするイラクやアフガンのテロ容疑者収容施設で行われた米兵による収容者虐待を調査した写真の公表を取りやめを決定。同大統領は記者団に対し、決定理由について「反米感情を刺激し、米兵士を危険にさらすことになる」と説明した。
さらにオバマ大統領は15日になって、120日間の審理停止を命じていたグアンタナモ基地の特別軍事法廷でのテロ拘束者の審理を再開すると発表した。オバマ大統領は声明で、特別軍事法廷を「米国を守るためには最善の方法だ」と支持。再開に当たり、①非人道的尋問で得られた証拠の不採用②伝聞証拠の制限③証言拒否の保護―などの改善策を導入する考えを示した。
案の定、人権団体からは「オバマ大統領は公約違反」の大合唱だ。加えて15日、中央情報局(CIA)とペロシ下院議長(民主党)との間で、「拷問」を象徴するいわゆる「水責め」に関し、その現況を「(ペロシ議長に)報告した」、いや「報告を受けていない」と互いに相手をけなし合う内紛が発覚。ペロシ議長は、拷問問題でブッシュ前政権批判の急先鋒だっただけに、初めから拷問の実態を知りながら黙認し、放置していたのではないかというわけだ。
軍を掌握するオバマ大統領が、「テロとの戦い」という現実を前に、国益最優先の「右旋回」を繰り返すことは今後とも続くだろう。ブッシュ批判をしているだけでよかった時代は既に戻ってこない。うまく舵取りをしないと、民主党内部のリベラル派、人権団体などの左派陣営は、雪崩を打って反オバマに傾いていく可能性がある。かといって左派におもねれば、保守派が黙ってはいない。さてどうするか。
グアンタナモ米国の「テロとの戦い」の最前線でありながらこのところメディアへの露出が減ってしまったアフガン。このアフガンで8月20日、自由選挙による2回目の大統領選が実施される。6日に米国を訪問したアフガンのカルザイ大統領は既に4日に、大統領選の候補者名簿に登録。
8日に締め切られた立候補届け出によると、これまでに、再選を目指す現職のカルザイ大統領をはじめ、女性2人を含む44人が届け出を行った。選挙管理委員会の審査を経て、6月12日に正式な候補者名簿が発表される。現時点では、カルザイ大統領に対する有力な対抗馬は見当たらず、同大統領の再選は確実。
で、イラクからの「名誉ある撤退」を模索する一方で、米軍兵力のアフガンシフトを公言しているオバマ米大統領。オバマ大統領は6日、ホワイトハウスで、米国入りしたカルザイ大統領およびカルダリ・パキスタン大統領と個別会談。さらには米・アフガン・パキスタンの3カ国大統領会談も行い、「テロとの戦い」完遂への意気込みを内外に誇示。
オバマ大統領は3カ国大統領会談の後、「国際テロ組織アルカイダとその協力者を分裂させ、解体し、打倒するという共通の目標を持って3カ国は集まった」と強調。その上で「共通の敵」を打ち破るため、情報共有など3カ国の連携強化の必要性を訴えた。また、アフガン政府が「共通の敵」と戦うのを支援する際、「市民の犠牲を防ぐ努力をする」とも述べた。度重なる米軍誤爆報道に対する苦しい弁明だ。
いずれにせよ、今夏のアフガン大統領選に向けて、アフガンに兵員を送っている米国、北大西洋条約機構(NATO)の派兵国は大変だ。仏ストラスブールで開かれていたNATO首脳会議は4月4日、軍事、民生支援の両方を支援するオバマ大統領の包括戦略を承認。これを受け、増派をしぶっていた欧州各国は、一転、今夏のアフガン大統領選に向け、約3000人の要員派遣を決めた。しかし、あくまで選挙までの短期的な派遣で、恒常的兵員不足に悩まされているNATOのアフガン展開の前途は不透明。
報道などによると、英国は選挙監視までの治安維持のための兵員として900人を派遣。またドイツ、スペインが各600人、イタリアも約250人を派遣する。このほか各国は計約1400~2000人のアフガン軍隊・警察の訓練要員も派遣する。
他方、アフガンと国境を接するパキスタンでは、国境地帯周辺のアフガン反政府武装勢力タリバンなどの掃討作戦を強化。パキスタン軍は8日、北西辺境州のスワト地区でタリバンなどイスラム武装勢力の一掃に向けた大規模な軍事作戦を行い、過去24時間に武装勢力側143人を殺害したと発表した。同地区ではこの2月に州政府と武装勢力との間で和平協定が結ばれたが、ギラニ・パキスタン首相は7日の国民向け演説で、武装勢力側が協定違反を繰り返したとして、協定を事実上破棄、攻撃を開始したことを明らかにしていた。
パキスタンや米政府内では、協定締結後にむしろ武装勢力が北西部で支配圏を拡大し、首都イスラマバードに迫る勢いを見せていることに危機感が強まっていた。軍事作戦はこうした状況を背景にしており、アフガン大統領選を前に戦闘の激化が予想される。
テロとの戦いオバマ米大統領は4月21日、ヨルダンのアブドラ国王とホワイトハウスで会談、中東和平交渉の停滞を打破するため、米国が「深い関与」を進める方針を表明した。同大統領は会談で、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長、エジプトのムバラク大統領を近く個別に招き、イスラエルとパレスチナの2国家共存案の実現に向け説得を図る方針を明らかにした。が、肝心要の当事者にその気は全くない。
まず、イスラエル国会(クネセト)が3月31日深夜(日本時間4月1日早朝)承認した右派リクードのネタニヤフ党首率いる新内閣。これまでの2国家共存によるパレスチナ和平実現策を「機能していない」と切り捨て。ネタニヤフ氏は約10年ぶり2回目の首相就任。外相には極右「わが家イスラエル」のリーベルマン党首、国防相には労働党のバラク党首が就任した。
国会の信任投票では、全120人のうち69人が新たな連立政権の承認に賛成した。労働党の一部議員は政権参加に反対し、欠席したとみられる。
ネタニヤフ氏は国会承認に先立ち演説し、「過激な政権が核武装しようとしている」とイランの脅威を強調。が、パレスチナ和平については、米国など国際社会が唱えるパレスチナ国家樹立にはついに言及せず。
オバマ大統領が中東和平実現の切り札として送り込んだミッチェル米中東特使は4月17日、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸ラマラでアッバス議長と会談した。現地からの報道によるとアッバス氏は、米国が右派主導のネタニヤフ新政権に対し、パレスチナ国家樹立による「2国共存」案を受け入れ、占領地でのユダヤ人入植地拡大を凍結するよう圧力をかけるべきだと訴えた。
これに先立ち、ミッチェル氏は4月16日にネタニヤフ首相と会談、同首相はパレスチナ自治政府との和平交渉再開の条件として、パレスチナ側が拒否してきた「ユダヤ人国家」としてのイスラエルの承認を求めた模様だ。
いずれにせよ、イスラエル側が、核開発を進めるイランを最大の域内不安要因と規定し、イスラエル建国後半世紀以上にわたって中東政治の眼目だったパレスチナ問題は、少なくともネタニヤフ政権下では脇に押しやられた形。
オバマ政権がいかなる説得に動こうと、ネタニヤフ政権が「オスロ合意」以降の2国家共存を強く推進するとは全く思われない。パレスチナ和平は今、大きな停滞期に突入したといえる。
中東和平北東アジアを舞台に再び北朝鮮のミサイル危機。北朝鮮は2月24日、実験通信衛星「光明星(クァンミョンソン)2号」を運搬ロケット「銀河(ウンハ)2号」で打ち上げると発表し、国際機関に対し4月4―8日の間に発射すると通告。「平和目的」と称するこのミサイルは既に、発射台への移動を開始した。表面的には、オバマ米政権を米朝2国間交渉へ引きずり込み、韓国の李明博政権に対北強硬策を断念させるのが狙いだろう。
ミサイル発射が秒読み段階に入ったのを受けて、日本政府は27日午前、国会内で安全保障会議(議長・麻生太郎首相)を開き、北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」名目で長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を発射した際の対処方針を決定。これに基づき浜田靖一防衛相は、ミサイルが日本の領土や領海に落下する場合に備え、自衛隊法82条2の3項に基づく「破壊措置命令」を発令した。2003年にミサイル防衛(MD)の整備が始まって以来、実際に「破壊措置命令」が発令されるのは初めて。
地上配備型パトリオット・ミサイル3の首都圏移動を示す写真が新聞紙面に踊る中で、遂には、東京都の石原慎太郎知事が27日の定例記者会見で、「こんなことを言うと怒られるかもしれないが、変なものが間近に落ちるなんてことがあった方が、日本人は危機感というか、緊張感を持つんじゃないかな」という一種の極論めいた警句まで登場。字面だけで見ると、日本が臨戦態勢に入った感がする。
他方、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の日米韓首席代表は27日、ワシントンで会談し、北朝鮮が発射準備を進めている長距離弾道ミサイル問題を協議。その結果、北朝鮮が通告通り4月4―8日にミサイルを発射した場合の対応について、「人工衛星」の打ち上げと主張しても国連安全保障理事会決議違反として、直ちに国連で取り上げるべきだとの認識で一致した。北朝鮮の思惑通りオバマ政権の目を引くことには成功したが、米朝2国間交渉も、李明博政権の対北政策変更も当然ながら引き出すことはできない。
だとするなら、今回のミサイル危機の伏線は何か。健康問題がうんぬんされる金正日北朝鮮総書記の、国威発揚策―これしかあるまい。この4月9日の最高人民会議では、同総書記の第3期指導体制がスタートする。「平和目的」と称する「衛星」運搬用ミサイルはその直前に発射されるわけで、事実上、金総書記の指導体制強化に向けた国威発揚の手段となる。北朝鮮テレビで、ロボットのようなアナウンサーががなりたてる、時代錯誤めいた甲高い音調のニュース朗読の格好の材料となるわけだ。>/p>
北朝鮮は06年10月、最初で最後の核実験を行い「核保有国」への仲間入りを果たした。が、再核実験はもはや無理。国際社会での孤立化をさらに招き、核兵器に使用できるわずかなプルトニウムを使い果たしてしまうからだ。だが、ミサイル発射だけならこのリスクを回避できる。「核の切り札」を保持できると同時に、金総書記にとっては、国内の体制強化につながるというメリットだけを享受できる。
こう見てくると、発射される可能性が極めて高い北朝鮮のミサイルは、実は北朝鮮の自国民に向けて発射されるということになる。
北朝鮮ミサイル国連の潘基文事務総長が11日、米下院外交委のメンバーとの会合で、国連分担金を滞納している米国を「最大の踏み倒し屋」だと面罵。国連運営にかかる費用は、総会によって加盟国で分担することが決められており、このいわゆる国連分担金の分担率の上限は米国が22%で第1位。日本は19.468%で第2位だ。この米国が国連分担金の支払いを渋り、国連広報センターによれば、2001年末現在で滞納総額は8億7100万ドル。潘総長の発言は一見正論のようだが、では、出身国の韓国はどうか。
04年末現在、国連分担金の滞納率は、米国(41%)、中国(64%)、ドイツ(25%)、フランス(31%)、イタリア(31%)に及ぶ。滞納総額が当該国の国連分担金の2年分を超えると投票権を喪失するので、各国ともちまちまと支払いと滞納を調整して、何とかとりつくろっているのが実態だ。そして、そして国連分担金の上位10カ国の中で、滞納の割合が65%とダントツなのが韓国である。潘総長の発言に、米下院外交委の連中が激怒するのは当然だ。
ちなみに、国連を支配している安保理の常任理事国5カ国のうち米国を除いた中国フランス、イギリス、ロシアの4カ国の国連分担金の割合は、合計で15.310%と日本に遠くおよばない。分担金の下限は0.001%でアフリカ諸国の大半がこの中に入る。そして、22%も0.001%も国連では同じ発言力しかない。0.001%組は先進国からの政府開発援助(ODA)でかろうじて国家経済が成り立っているという現状を考慮すれば、「国連は運営がなってない」と米国ががなりたてるのももっともなことだ。
戦争は、やるからには勝たねばならないというのは、この銭の問題に如実に表れている。戦勝国は今でも、負け組を食い物にしているのだ。日本の常任理事国入りに反対している中国は、日本の分担金のほぼ10分の1、北方領土の返還を拒み続けているロシアは日本の19分の1、常任理事国ではないが、日本の常任理事国入りに反対している韓国は、10分の1にも満たない。
さらには、日本は分担金以外に国連平和維持活動(PKO)予算に約454億円、世界保健機関(WHO)やユネスコに約300億円、スマトラ沖地震・津波の援助金と何のかんので年間1000億円以上を国連機関に納めて、こまめに金をばらまいている。これだけ、貢いでいるのに、日本は未だに敗戦国として取り扱われている。
まあ、それはともかくとして、先の潘基文発言だが、共和党のロスレイティネン筆頭理事は声明で「信じられない発言だ。国連が非効率なのは、資金不足のためではなく、資金を浪費する腐敗したシステムを抱えているからだ」と発言を批判。さらに「イランやシリア、北朝鮮が世界を危険にさらしているときに、国連は民主主義国家である米国やイスラエルを非難することで頭がいっぱいになっている」として、国連自身の改革を進めるよう求めた。
何とも、文字通りの「会議は踊る」の図だ。筆者の生まれ育った場所では、「目くそ、鼻くそを笑う」と言う。
国連分担金




