「すんまそん、いいじゃんそんなこと」―安倍首相の慚愧・慙愧
安倍首相が松岡農相の自殺について、「慚愧(ざんき)に堪えない」と述べたことについて、「『残念だ』という意味で使ったのであれば、間違っている」という指摘が出ている。
「慚愧」は「恥じ入ること」(広辞苑)という意味だからだ。首相周辺は「最近は反省の意味でも使われており、問題はない」としている。
慚愧。慙愧とも書く。そもそもの出所は仏教用語らしい。親鸞の「教行信証」によると、「『慚』は自ら罪をつくらず、『愧』は他を教えてなさしめず。『慚』は内に自ら羞恥す、『愧』は発露して人に向かう。『慚』は人に恥ず、『愧』は天に恥ず」で、これが「慚愧」だそうな。要するに、「慚」は自己に対して恥じること、「愧」は外部に対してその気持ちを示すことである。
「東大生が書いたお役人コトバの謎」(東大ベストセラー出版会PICASO/編、三省堂)は、「政治家の使うお役人コトバ」としての慚愧の意味として、「すんまそん、いいじゃんそんなこと」とある。ちなみに「失念いたしました」=「嘘つくと厄介なことになるから、忘れたことにしちゃおう」、「所定のお手続きが必要になります」=「もう一度出直してください」となっている。
慚愧の用法として、残念という意味で使うのであれば誤用としか言いようがないが、まさにお役人コトバとしての用法なら、正鵠を射た使い方だ。この至極難しい奇っ怪、荘厳な語句を、お役人コトバとして世間に広く知らしめたのは、第1次小泉政権の官房長官だった福田康夫氏の辞任記者会見でのひと言。自らを含む閣僚たちの年金未納が発覚し、「政治に対する国民の信頼を失ったことは慚愧に堪えません」ってのがそれだとされる。
松岡農水相自殺という衝撃的な事件の本質は、「慚愧」をうんぬんして揚げ足をとることでは何ら解決しない。安倍首相の今回の一連の事件に対する姿勢を問うのなら、既存マスコミは他になすべきことが多々あるはずだ。言葉尻をとらえて鬼の首を取ったような振る舞いは控えた方がよかろうと愚考する。
慙愧慚愧
松岡農水相自殺


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