フィデル・カストロからラウル・カストロへ―キューバが世襲的政権移行
1962年のキューバ危機。全世界を核戦争の恐怖に陥れた13日間。2000 年に公開されたハリウッド映画「13デイズ」で、ケビン・コスナー演じるオドネル大統領特別補佐官の目を通じて、フルシュチョフ・ソ連共産党第1書記と厳しく対峙(たいじ)して一歩も引かなかった同危機における若きケネディ米大統領の姿が活写されていたのが記憶に新しい。
ケネディ大統領の側近だったセオドア・ソレンセンの著書「ケネディ」では、キューバ危機の米ソ対決の決着が着いたのは、ロバート・ケネディ司法長官とアナトリー・ドブルイニンソ連駐米大使が、ABCネットワークの記者ジョン・スカリーの仲介で深夜のワシントン市内の公園で密かに会って話し合ったときであったことが記されている。「13デイズ」もこのような視点で描かれている。無論、真相は不明のままだ。
このキューバ危機の張本人の1人で、ケネディ、フルシュチョフ亡き後最後まで生き残っていたフィデル・カストロ国家評議会議長(81)が19日、同国共産党機関紙グランマ紙上で、国家評議会議長からの引退を表明。同議長は06年7月末に腸内出血で倒れて以来、主要権限を弟のラウル・カストロ第1副議長(76)に暫定委譲して公の場から姿を消していた。
米国の厳しい経済制裁に耐え抜き、カリブ海に浮かぶ社会主義国キューバを半世紀近く統治してきたカストロ議長の後継には、ナンバー2として半世紀にわたり同議長を支えてきたラウル氏が選出された。
ブッシュ米大統領はカストロ引退に関し、訪問先のルワンダでの記者会見で、「カストロの引退がキューバにおける民主化移行の始まりになると信じている」とキューバ民主化への期待を表明。
ブッシュ大統領は「民主化」の具体的な措置としてキューバがやるべきことは、「まずその第1歩として政治犯の釈放を実施し、国際社会はキューバ国民と協力して民主化に必要な組織づくりを始めるべきだ」とし、「最終的にこの移行は自由で公正な選挙につながらなければならない。米国はキューバ国民が自由の恩恵を理解することを手助けする」と強調。
さらにロイター通信によると、キューバ出身のグティエレス米商務長官は19日、カストロ引退について、「圧政者同士の引き継ぎだ。甘い考えを持つべきではなく、彼が生きている間は主導権を握っている」と権力の世襲に警鐘を鳴らし、対キューバ経済制裁解除は時期尚早との考えを表明。
キューバでは24日、集団指導機関であり最高意志決定機関でもある国家評議会メンバーを選ぶ人民権力全国会議(国会、614議席)が開かれ、現在暫定政権を率いる弟のラウル・カストロ第1副議長が新国家評議会議長に選ばれた。
フィデル・カストロ氏は、国家評議会議長と軍最高司令官の地位からの引退を表明してはいるが、唯一の政党である共産党のトップ、第1書記のポストをどうするかについては何も触れておらず、第1書記のポストを維持して今後も次期政権に影響力を及ぼすとの観測もある。
フィデル・カストロ氏は現在、国家評議会議長、首相に当たる閣僚評議会議長、革命軍最高司令官、共産党第1書記を務めていた。19日の声明では、国家評議会議長と最高司令官からの引退を表明。国家評議会議長と兼務扱いの閣僚評議会議長も自動的に退くことになる。
キューバ共産党の党規約によると、第1書記は最高機関の党大会が選出する党中央委員会で選任される。党トップ交代に党大会は必要ないとの見解もあるが、重要案件だけに党大会の手続きを踏むとの見方が有力。
5年ごとの開催が規定されている党大会は、1997年10月(第5回大会)を最後に招集されていない。ハバナの外交筋は「来年1月の革命50周年を控え、今年中に党大会を開く可能性がある。カストロ氏は大会を節目に党第1書記を引退するのではないか」との見方もある。
カストロ

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