今年11月14日の米大統領選本選に向けた民主党の大統領候補指名争いは、空気を読もうとしないクリントン候補の徹底抗戦で、8月の党大会まで執念の争いが続く公算が大となった。その一方で、同候補は名誉ある撤退の道を模索しているとの見方も根強い。夫のクリントン元大統領が徹底抗戦派の先陣で、選挙参謀らは、名誉ある撤退に傾いている。

 20日行われたケンタッキー州予備選で白人労働者層の根強い支持を背景に、オバマ候補に大勝したクリントン候補だが、この日同じく予備選が実施されたオレゴン州では、オバマ候補が勝利、このため、オバマ候補は同日のアイオワ州デモインでの演説で、民意を代表する一般代議員の過半数(1627人)を獲得したとして「勝利」を誇示。

 他方、クリントン候補は20日夜、ケンタッキー州ルイビルで支持者に同州での勝利を報告した中で、「私は決してあきらめない」などと述べ、プエルトリコを含む6月3日までの3予備選の選挙活動を継続する決意を重ねて表明。同候補は翌21日のAP通信とのインタビューで、資格がはく奪されたミシガン、フロリダ両州の代議員復活を訴え、8月の党大会まで戦う用意があると言明。両州代議員復活の是非を判断する5月31日の党規委員会を前に、逆転に望みをかけるクリントン陣営の動きが活発化してきた形。

 ミシガン、フロリダ両州は、予備選の日程を前倒しして党全国委員会の制裁を受け、代議員資格を喪失。純粋な人気投票となった1月の両州予備選ではクリントン氏が「勝利」している。クリントン陣営はこの代議員を復活させ、予備選の結果に基づいて配分すべきだと要求している。認められればオバマ候補との獲得代議員数の差が縮まる上、総得票数でオバマ氏を上回ることになる。

 が、これは実は表向きのことで、米CNNテレビは23日、クリントン候補の「名誉ある撤退」に向け、オバマ候補とクリントン候補の陣営幹部が非公式協議に入ったと報じた。近く本人同士が会談し、オバマ氏がクリントン氏に副大統領候補となるよう要請する案が浮上しているという。

 オバマ陣営は、公式には「指名レースはまだ真剣勝負で、取引はない」としている。クリントン候補自身も、あくまで大統領を目指す意図を明確にしている。CNNは、「副大統領候補案」の真意は実際にコンビを組むことでなく、クリントン氏に敬意を表し、支持者を取り込む狙いとしている。が、どちらにしても、クリントン候補の選挙参謀らが、本選に向けた党内和解を念頭に、大局的な見地から「名誉ある撤退」に向けて動き出したのは間違いあるまい。

 徹底抗戦派の首魁は、クリントン元大統領という説が一番有力。どちらにしても、今現在の段階では、血みどろのパンチ応酬が続いているということだけは確か。そこで激しくなるのがメディアの揚げ足取り。

 折も折、クリントン候補は23日、6月3日に予備選を控えたサウスダコタ州スーフォールズの地元紙オーガス・リーダーとのビデオ会見で、「私の夫は1992年6月半ばのカリフォルニア州予備選で勝つまで活動をやめなかったでしょう。ボビー(ロバートの愛称)・ケネディ(元司法長官)がカリフォルニアで6月に暗殺されたことは、みんな覚えているわよね。だから(選挙戦撤退の要求について)私は理解できないわ」とやってしまった。

 テキサス州ダラスで暗殺されたケネディ元大統領の実弟で、司法長官や上院議員を務めたロバート・ケネディ氏は、1968年の大統領選で、民主党の候補指名に向けた選挙活動を展開した。しかし、カリフォルニア州予備選での勝利直後、ロサンゼルスのホテルで銃撃されて死亡。民主党内の足並みは乱れ、本選で同党候補のハンフリー副大統領は共和党のニクソン候補に敗れるという展開になっていく。

 黒人初の大統領をめざすオバマ候補には、昨年の序盤戦段階から襲撃の懸念が浮上し、シークレット・サービスが身辺を厳重に警護しているだけに、あまりに迂闊な発言だった。「クリントン、オバマの暗殺を期待」とかのヘッドラインが紙面を飾り、ワイドショーに取り上げられさんざん揶揄される始末。クリントン候補は陳謝したが、大きなマイナス要因になったことはいなめない。

 共和党大統領候補の指名を確実にしているマケイン候補は既に、オバマ候補が勝利するとの「空気を読んで」対オバマ戦略を練り上げている最中なのだが。

 「同情されながら死ぬよりも、世界を敵に回しても生き延びる」(ゴルダ・メイア・イスラエル元首相)―。1948年5月14日の夕刻、テルアビブの美術館のホールに、シオオニズムの中核、ユダヤ国民評議会のメンバー300人が参集。この中で、同評議会の実行機関、ユダヤ機関の長であったダビッド・ベングリオンは、ホールに掲げられた「シオンの丘にユダヤ人の祖国を」というシオニズムの提唱者、テオドール・ヘルツルの肖像の前に立ち、高らかに宣言した。

 ベングリオンは世界に宣言する。「われわれ、ユダヤ市民およびシオニズム運動の代表たる国民評議会は、英国による委任統治が終わるこの日、自然的および歴史的権利、そして国連総会決議に基づいて、ここパレスチナに「イスラエル国」と号するユダヤ人国家の建設を宣言する」。紀元前586年に新バビロニアにより古代イスラエル王国が滅ばされ、西暦75年にマサダの砦が陥落してユダヤ戦争がローマ帝国の勝利に終わって以降流浪の民となっていたユダヤ人が、2500年ぶりに国家を持つこととなった瞬間である。

 独立宣言書のサインの筆頭には、ワイツマンの名前。ちなみに、世界に向けてユダヤ人の祖国建設の重要性を説いて回り、莫大な献金を集めることに成功した後の首相ゴルダ・メイアは25番目。ほとんどはマパイ党かヒスタドルートのメンバーだった。初代大統領にはハイム・ワイツマン博士が就任し、初代首相にはベングリオンが任命される。そして、独立宣言の3時間後、米国はイスラエルを承認(ソ連と東欧諸国は4日後に承認)。

 が、米国の新生イスラエル承認とほぼ同時に、エジプト空軍機がテルアビブを空襲。さらに14日中にエジプト、シリア、トランスヨルダン(現ヨルダン)、レバノン、イラクがイスラエルに宣戦布告し、翌15日には、それぞれの軍隊が国境を突破して、三方からイスラエルになだれ込む。こうして4回にわたるアラブ・イスラエルの全面戦争、今も連綿と続くイスラエルとパレスチナ・アラブ人の憎悪の応酬が始まることとなる。

 イスラエル建国60周年。英仏が去って、共産圏の影が旧ソ連の崩壊とともに四散したこの60年の中で、常に変わらなかったものが1つだけある。米国とイスラエルの同盟関係がそれだ。信仰の自由を求めて新大陸に船出した清教徒の末裔は、新大陸に米国という国家をつくりあげ、今度はパレスチナの地に、ユダヤ国家を再建した。神に選ばれたと自称する米国が、同じく神に選ばれたとするユダヤ国家と結びつくのは世界史の必然かもしれない。

 この60周年を記念してイスラエルを訪問したブッシュ米大統領は15日、クネセト(イスラエル国会)で演説し、両国が結束してテロに立ち向かえば「中東を民主主義へ変革できる」との持論を展開。同大統領は14日のイスラエル建国60周年記念式典での演説と同様、シリアとイランを名指しして非難し、イスラエルとの強固な同盟関係を強調。

 演説は、対テロ戦争で「米国はイスラエルの側にある」との姿勢に終始。テロと過激思想に立ち向かう米国とイスラエルの断固たる決意を「善と悪の戦い」と表現、2001年の米同時多発テロ後にブッシュ大統領が多用した勧善懲悪的なレトリックを駆使したものとなる。また、国連人権理事会がパレスチナでの人権侵害などでイスラエル非難の決議を繰り返していることについて、「中東で最も自由な民主主義国家に対して恥ずべきこと」と疑問を投げかけた。

 ブッシュ大統領は「テロリストと交渉すべきだ」「米国がイスラエルと関係を絶てば中東の問題は解決できる」との主張を「ばかげた考え」と一蹴。カーター元米大統領が最近、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスと対話したことを間接的に批判した。同大統領は将来の中東の姿として、「パレスチナ人が夢見た祖国を持ち、シリアとイランの圧政が遠い記憶となり、(イスラム原理主義勢力の)ハマス、ヒズボラが敗北する」という構図を披瀝。

 ともかくも、イスラエル建国時のイスラエル、アラブ側の対応は、「同情されながら死ぬよりも、世界を敵に回しても生き延びる」とナチスドイツのホロコースト(ユダヤ人虐殺)を念頭に置いた悲壮な決意に象徴されるごとく、完全にイスラエル側に軍配は上がる。アラブ側がパレスチナ人の招来など思っていなかったことは明白で、自国の利害追求に邁進するだけ。東エルサレムとヨルダン川西岸を占領したトランスヨルダンは、これを自国領に併合、国名をヨルダンに変える始末。エジプトはエジプトで占領したガザ地区を自国領に飲み込んだ。

 多大の人的被害を出しながらも、ユダヤ人過激組織の武装部隊をユダヤ機関の率いるハガナに統合させ、後のイスラエル国防軍(IDF)の基礎をつくりあげたベングリオン。彼は4回目の中東戦争が勃発した1973年に世を去ったが、彼が建国宣言したイスラエルは今、中東の最強国家であり最先進国家でもある。憐れなユダヤ人、悲惨なパレスチナ人という同情論はくその役にも立たない。

 ロシア大統領選挙で当選したメドベージェフ第1副首相が7日、クレムリンで大統領就任宣誓を行い、第3代大統領に就任。プーチン前大統領はこの日をもって退任したが、メドベージェフ新大統領によって首相に指名された。首相指名は8日に下院で承認され、大統領と実力派首相が並立する異例の「双頭体制」が実現。

 メドベージェフ新大統領は宣誓後の演説で「市民と経済の自由を発展させることが最重要の課題だ」と述べ、法の尊重や汚職との闘いを訴えた。また、プーチン前政権の8年間で長期的発展の強固な基盤が築かれたとした上で、「このチャンスを最大限利用し、ロシアを世界でも最良の国の一つにする」と呼号。

 ところが、かつての旧ソ連時代に激しく世界の覇権を競い合った米国では、同じ大統領を選ぶに当たって、共和党からの政権奪取を狙う民主党内で、オバマ候補とクリントン候補が泥沼の大統領候補指名争いを続けたまま。大政翼賛会的な色彩の濃いロシアに対し、さすが世界に民主主義の範を日々たれている米国だけのことはある。

 4月22日のペンシルベニア州予備選に続き、7日にはノースカロライナ州とインディアナ州で予備選が実施されたが、ペンシルベニア州予備選を制したオバマ候補が、ノースカロライナ州で勝ち、土壇場に追い込まれているクリントン候補がインディアナ州予備選で辛勝。これまの獲得代議員数は、どちらも圧倒的に優位とは言えず、ほぼ二分された形。全予備選が終了する6月3日までこのまま推移するとの見方が支配的だ。

 とにもかくにも、一刻も早く党としての大統領候補者を決めて、一丸となって共和党のマケイン候補との決戦の準備を始めたい民主党指導部にとっては、現段階でオバマ候補を擁立する決定的な要素がなく、かといって、撤退をクリントン候補に受け入れさせる決め手もないという悪循環。

 先頭を走るオバマ候補の米国民に対する求心力は依然と未知数で「雰囲気」頼みの感がなきにしもあらず。かといって、クリントン候補が正当に指名を獲得する見込みも、このままでいけば薄いままだ。長引く中傷合戦で、党内の支持基盤は分裂し、「共和党に負けるのではないか」という不安の声が強まっている。米主要メディアも、「列車が転覆した状態」「結論出ず」「終わりの見えない戦い」と疲れ気味。

 大統領選民主党候補争いが長期化する中で、選挙資金捻出にもオバマ、クリントン両候補は頭を悩ませている。劣勢のクリントン候補の懐具合がどうもおかしいようだ。オバマ候補が3月に集めた献金総額は4280万ドル、クリントンは2090万ドル。ペンシルベニア州予備選の投票日前日には、クリントン陣営が多額の借金を抱えていることも報道された。

 この7日には、クリントン陣営が、クリントン候補が4月から5月にかけて、個人資金計640万ドル(約6億7000万円)を選挙資金として陣営に貸与したことを明らかにした。同候補は1月末にも500万ドルの私財を投入しており、オバマ候補との指名争いで劣勢が続く中、資金繰りも困難に陥っている実態が浮き彫りとなった。

 民間調査機関「応答する政治センター」によると、クリントン候補は3月末時点で手持ち資金3170万ドルでオバマ氏を約2000万ドル下回っているほか、借入金が1500万ドルに達している。

 実際のところ、これだけ執拗に中傷合戦を展開して、「はい大統領候補が誰々さんに決まりました。今度は、マケインさんが相手ですから党を挙げて戦いましょう」と豹変できるのか?今回はしつこくオバマに食いついてマケインに勝たせず、次回大統領選で勝負に出るというクリントン候補の「本心」なるものが囁かれるゆえんである。

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