不変の米・イスラエル同盟関係―イスラエル建国以来60年間で唯一変わらなかったもの
「同情されながら死ぬよりも、世界を敵に回しても生き延びる」(ゴルダ・メイア・イスラエル元首相)―。1948年5月14日の夕刻、テルアビブの美術館のホールに、シオオニズムの中核、ユダヤ国民評議会のメンバー300人が参集。この中で、同評議会の実行機関、ユダヤ機関の長であったダビッド・ベングリオンは、ホールに掲げられた「シオンの丘にユダヤ人の祖国を」というシオニズムの提唱者、テオドール・ヘルツルの肖像の前に立ち、高らかに宣言した。
ベングリオンは世界に宣言する。「われわれ、ユダヤ市民およびシオニズム運動の代表たる国民評議会は、英国による委任統治が終わるこの日、自然的および歴史的権利、そして国連総会決議に基づいて、ここパレスチナに「イスラエル国」と号するユダヤ人国家の建設を宣言する」。紀元前586年に新バビロニアにより古代イスラエル王国が滅ばされ、西暦75年にマサダの砦が陥落してユダヤ戦争がローマ帝国の勝利に終わって以降流浪の民となっていたユダヤ人が、2500年ぶりに国家を持つこととなった瞬間である。
独立宣言書のサインの筆頭には、ワイツマンの名前。ちなみに、世界に向けてユダヤ人の祖国建設の重要性を説いて回り、莫大な献金を集めることに成功した後の首相ゴルダ・メイアは25番目。ほとんどはマパイ党かヒスタドルートのメンバーだった。初代大統領にはハイム・ワイツマン博士が就任し、初代首相にはベングリオンが任命される。そして、独立宣言の3時間後、米国はイスラエルを承認(ソ連と東欧諸国は4日後に承認)。
が、米国の新生イスラエル承認とほぼ同時に、エジプト空軍機がテルアビブを空襲。さらに14日中にエジプト、シリア、トランスヨルダン(現ヨルダン)、レバノン、イラクがイスラエルに宣戦布告し、翌15日には、それぞれの軍隊が国境を突破して、三方からイスラエルになだれ込む。こうして4回にわたるアラブ・イスラエルの全面戦争、今も連綿と続くイスラエルとパレスチナ・アラブ人の憎悪の応酬が始まることとなる。
イスラエル建国60周年。英仏が去って、共産圏の影が旧ソ連の崩壊とともに四散したこの60年の中で、常に変わらなかったものが1つだけある。米国とイスラエルの同盟関係がそれだ。信仰の自由を求めて新大陸に船出した清教徒の末裔は、新大陸に米国という国家をつくりあげ、今度はパレスチナの地に、ユダヤ国家を再建した。神に選ばれたと自称する米国が、同じく神に選ばれたとするユダヤ国家と結びつくのは世界史の必然かもしれない。
この60周年を記念してイスラエルを訪問したブッシュ米大統領は15日、クネセト(イスラエル国会)で演説し、両国が結束してテロに立ち向かえば「中東を民主主義へ変革できる」との持論を展開。同大統領は14日のイスラエル建国60周年記念式典での演説と同様、シリアとイランを名指しして非難し、イスラエルとの強固な同盟関係を強調。
演説は、対テロ戦争で「米国はイスラエルの側にある」との姿勢に終始。テロと過激思想に立ち向かう米国とイスラエルの断固たる決意を「善と悪の戦い」と表現、2001年の米同時多発テロ後にブッシュ大統領が多用した勧善懲悪的なレトリックを駆使したものとなる。また、国連人権理事会がパレスチナでの人権侵害などでイスラエル非難の決議を繰り返していることについて、「中東で最も自由な民主主義国家に対して恥ずべきこと」と疑問を投げかけた。
ブッシュ大統領は「テロリストと交渉すべきだ」「米国がイスラエルと関係を絶てば中東の問題は解決できる」との主張を「ばかげた考え」と一蹴。カーター元米大統領が最近、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスと対話したことを間接的に批判した。同大統領は将来の中東の姿として、「パレスチナ人が夢見た祖国を持ち、シリアとイランの圧政が遠い記憶となり、(イスラム原理主義勢力の)ハマス、ヒズボラが敗北する」という構図を披瀝。
ともかくも、イスラエル建国時のイスラエル、アラブ側の対応は、「同情されながら死ぬよりも、世界を敵に回しても生き延びる」とナチスドイツのホロコースト(ユダヤ人虐殺)を念頭に置いた悲壮な決意に象徴されるごとく、完全にイスラエル側に軍配は上がる。アラブ側がパレスチナ人の招来など思っていなかったことは明白で、自国の利害追求に邁進するだけ。東エルサレムとヨルダン川西岸を占領したトランスヨルダンは、これを自国領に併合、国名をヨルダンに変える始末。エジプトはエジプトで占領したガザ地区を自国領に飲み込んだ。
多大の人的被害を出しながらも、ユダヤ人過激組織の武装部隊をユダヤ機関の率いるハガナに統合させ、後のイスラエル国防軍(IDF)の基礎をつくりあげたベングリオン。彼は4回目の中東戦争が勃発した1973年に世を去ったが、彼が建国宣言したイスラエルは今、中東の最強国家であり最先進国家でもある。憐れなユダヤ人、悲惨なパレスチナ人という同情論はくその役にも立たない。
イスラエル建国60周年

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