【米大統領選】米大統領選民主党候補指名争い、癒せぬ傷残しオバマ候補勝利―クリントン氏、対マケインで党内結束強調の敗北宣言
熾烈を極めた米大統領選民主党候補指名争いが終結した。黒人初の米大統領を目指すバラク・オバマ上院議員(46)は6月3日夜、サウスダコタ、モンタナ両州で最後の予備選が終了したあと、ミネソタ州セントポールで演説し、民主党の大統領候補になったと勝利宣言。今後は共和党大統領候補のジョン・マケイン上院銀(71)との本選に向けた5カ月間の選挙戦に全力を傾注するとした。執拗にオバマ候補に食い下がったヒラリークリントン上院議員(60)は、副大統領候補になる含みを残している。
オバマ議員と敗れたクリントン議員は5日夜、秘密裏に会談し、「11月の(本選での)勝利に向け、実りある話し合いをした」との共同声明を発表。さらに7日正午(日本時間8日午前1時)には、「撤退」を公式に表明するとともに、本選に向けてマケイン候補に対抗し、オバマ大統領誕生実現のための「党の結束」をアピールした。夫のクリントン前大統領と一緒に進めてきたクリントン氏の政治活動は、1つの節目を迎えたことになる。
AP通信によると、クリントン氏は5日午後、カリフォルニア州選出で仲のよい女性上院議員、ダイアン・ファインスタイン氏に電話し、「オバマ氏と会いたいので自宅を使わせてほしい」と依頼した。ファインスタイン氏の連絡にオバマ氏は、「いつでもクリントン氏の希望する場所に行きます」と答えたという。会談はファインスタイン氏のワシントンの自宅で午後9時に始まり、2人だけで1時間ほど続いた。会談を終えた2人は「笑って(部屋から)出てきた」(ファインスタイン氏)とされる。
オバマ氏は遊説先からイリノイ州シカゴの自宅に戻る途中、ワシントンの空港で姿をくらましていた。
いずれにせよ、早くから党内基盤を固め、従来型の保守政治を踏襲するマケイン氏と、40代というケネディ大統領以来の若さを掲げたオバマ氏の一騎打ちとなるわけだが、両者の最大の違いは外交政策だろう。両氏とも米国の威信回復で一致するが、その手法は「圧力」と「対話」で両極だからである。
海軍出身で「ベトナム戦争の英雄」のマケイン氏はテロ対策を重視し、敵対国には強硬姿勢であたる立場だ。ただ「軍事力だけでは世界を指導できない」とも考えており、「同盟国の意思を尊重する」と単独行動主義を排する。
オバマ氏は「敵と話すことができるのが強い大統領だ」と敵対国との直接交渉を掲げる。キューバ危機後、ソ連と交渉したケネディ大統領がモデルだ。国際社会の協力を基軸とし「米国が変わったと世界に思われることが重要」と訴える。
マケイン氏はオバマ外交を「認識が甘い」と指摘、軍歴がないことも批判している。オバマ氏は軍事オプションを誘発する恐れがあるとして、マケイン氏の強硬路線を批判。「ブッシュ政権を継承した政策」と応戦する。その違いは、対イラク政策でより顕著である。
オバマ氏は大統領就任後、直ちに駐留米軍撤退に着手し、16カ月以内に段階的撤退を完了させる方針。イラクの治安確保のため、(1)国連を中心とした宗派間、民族間の和解支援(2)イラン、シリアを含めた中東諸国の安定化とテロ組織の孤立化に向けた外交強化―という道筋を描く。まあ、これはオバマ氏固有のというわけではなく、民主党内に多いハト派的な考え方だ。
一方、「米軍のイラク駐留は100年続くかもしれない」と語ったマケイン氏は、5月15日の演説で「(次期大統領任期中の)13年までにイラクのテロを根絶し、大部分の米兵を帰国させたい」と述べた。一定のメドを提示することで「3期目のブッシュ政権」との批判をかわす狙いもあるが、イラクの安定に米軍の関与が必要との認識は変わらない。マケイン氏は「ならず者国家」との対話には厳しい批判を展開する。世界の不安定要因となったイラン、北朝鮮の核問題に対しては、同盟国との協調を緊密にして外交圧力を形成していくという手法である。
では、対アジア政策ではどうか。マケイン、オバマ両氏とも日米同盟の重要性を共有している点で変わりはない。ただ、アジア外交で同盟国優先の立場を貫くマケイン氏に対し、オバマ氏は中国を抱き込んだ安保体制構築を掲げるなど、若干の温度差がある。が、これとて、従来からの共和党と民主党の対アジア感の違いと言えなくもない。 オバマ氏は2007年4月、当時の安倍晋三首相訪米前に上院で演説。日米同盟を「戦後の偉大な成功例」「日本がアジアの安定と安全確保を果たすための中核」と位置付け、自衛隊の役割拡大を「普通の国としての印」と歓迎した。
一方、マケイン氏は「グローバルパワーとしての日本の台頭を歓迎する」と、オバマ氏より踏み込んだ表現で日米基軸を打ち出している。日本の指導力向上によって日米同盟も強固になる、というのが基本スタンスだ。マケイン陣営には、ブッシュ政権の対日政策の中心だったアーミテージ元国務副長官ら知日派が多い。マケイン氏は日本人拉致問題も重視する考えを示しており、ブッシュ政権の対日重視路線が継承される。
マケイン氏のブレーンには、スコウクロフト元国家安全保障問題担当大統領補佐官やアーミテージ元国務副長官ら現実路線派と、ロバート・ケーガン氏らネオコン(新保守主義者)が共存している。
陣営内の綱引きもあり、もともとロシアを非民主的として主要国首脳会議(G8)から排除するよう主張していたが、最近、核軍縮交渉を開始すると表明したのは現実派の意向と言われている。ユダヤ系で00年大統領選の民主党副大統領候補だったリーバーマン上院議員(無所属)は側近で、国務長官候補とも言われる。
一方、オバマ氏の外交ブレーンはクリントン前政権のレーク元国家安全保障問題担当補佐官、ダンジグ元海軍長官ら。カーター政権時代のブレジンスキー元国家安全保障問題担当補佐官も後押ししている。ワシントンに新風を吹き込む」というのが外交政策の発想。だが、核兵器の不使用発言などには外交ブレーンが注意を喚起。敵対国との直接交渉方針も「入念な準備をしてから」と当初からは後退している。
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