忙中閑あり、米大統領選。が、その中で、勢いに乗るオバマ上院議員。民主党大統領候補に確定しているこの黒人政治家の外交政策が、少しずつ体を成してきたようだ。同議員は15日、ワシントンで外交・国家安全保障の重要政策で演説。イラク戦争を「責任アル形」で可能な限り早急に終結させ、国際テロ組織アルカイダ、アフガン反政府武装勢力タリバンとの戦争を「絶対に勝たなければならない戦争」と規定した。「オバマ政権」が誕生したあかつきには、米国が先陣を取って進める「テロとの戦い」は、より純化された形で継続されることを公言したわけだ。
オバマ議員は、「切りがないイラクへの固執は正しい戦略ではない」とブッシュ政権を批判し、戦略の転換が必要だと強調。自分がホワイトハウス入りした場合に追求すべき5つの目標として、1)責任ある形でのイラク戦争終2)アルカイダやタリバンとの戦いの完遂3)テロリストやならず者国家からの核兵器や核物質の防護4)エネルギー安全保障の確立5)21世紀型の同盟再構築-を挙げた。イラン核に関しては、イラク指導部と対話を行う考えは既に示しているが、これが「オバマ政権」の軟化路線ではないことを示した。
イラク戦争の「責任ある形での終結」に可能性を与えたのは、ほかならぬブッシュ共和党政権である。この21日、中東・欧州歴訪の一環としてイラクの首都バグダッドを訪問したオバマ議員は、これまでの米軍増派反対というかたくなな姿勢を変え、米軍増派がイラクの治安回復に大きく寄与したことを認めた。泥沼の内戦状態下にあるイラクからともかくも足を洗うという従来の主張から、イラク国内の治安はイラクの国軍にゆだねるという具合に微妙にシフトしたのである。要するに、これまで全否定しきたブッシュ政権のイラク政策を評価したわけだ。
オバマ議員は25日、パリのエリゼ宮(大統領官邸)でサルコジ仏大統領と会談。サルコジ側はオバマ議員を現職の米大統領並に厚遇した。会談後には共同記者会見の場まで設定した。サルコジ大統領は「オバマ氏が当選すればフランスは喜ぶだろう」と事実上のオバマ支持を表明。オバマ議員は、フランスが介入に強く反対したイラク戦争には触れずに、イラン核問題やアフガン増派などで米仏両国が連携を強化していくことを確認、「イランはサルコジ大統領と欧州連合(EU)が示す提案を受け入れるべきだ。(米国の)新大統領誕生を待つべきではない」とイラン側の迅速な対応を促した。
オバマ議員のこのような微妙なシフトは、共和党の大統領候補に確定しているマケイン上院議員も再三にわたり指摘しているが、オバマ議員の勢いをそぐまでには至っていない。この24日に行われた訪問先のドイツ・ベルリンの「戦勝記念塔」前におけるオバマ議員の演説には、何と20万人のドイツ国民が集まった。このオバマ演説について、ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレは「オバマ氏は異例にも、大統領選を米国の外へもち出し、世界にアピールできる指導者であることを人々に印象付けた」と好意的に評価。
次期米大統領としてのイメージに関しては、オバマ議員がマケイン議員を圧倒している。
米大統領選米大統領選をこの11月に控え、イラク情勢をはじめとする中東情勢は実に茫洋としてつかみどころがなくなった。ブッシュ政権は既にレームダックだし、次がバラクになるのかマケインになるのかは、実は不倶戴天の敵イランも含めて全中東の独裁者、政治家が注視するところだからだ。
まずパレスチナ問題。中東和平に向けた日本とイスラエル、パレスチナ、ヨルダンによる「第3回閣僚級4者会合」が2日、外務省飯倉公館で開かれた。日本が提唱する和平支援策「平和と繁栄の回廊」構想を2009年早期に着手することで合意し、中東の安定に向け4者が連携を深めていくことで一致した。
出席したのは高村正彦外相、エズラ・イスラエル環境相、パレスチナ自治政府のアブドラ労働相、バシール・ヨルダン外相。会合で高村外相は「中東和平には、イスラエルと共存共栄するパレスチナ国家建設が欠かせない」と述べ、同構想の実現を通じたパレスチナの自立の必要性を強調。
「平和と繁栄の回廊」構想とは、現在パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの勢力下にあるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に農産業団地を建設し、周辺諸国との物流活性化でパレスチナの自立を図るもので、日本が政府開発援助(ODA)で支援する。北海道洞爺湖サミットで、この4者会合の結果は報告されている。
だが、わざわざファタハ支配下のヨルダン川西岸とことわらざるを得ないところにパレスチナ問題が置かれた抜き差しならない状況がある。もう一方のパレスチナ自治区であるガザ地区は、ファタハを武力で追放したイスラム原理主義組織ハマスが実効支配しているからだ、パレスチナ人自身が自助努力でこのファタハとハマスの抗争に何とか区切りをつけない限り、とてもではないが「平和と繁栄の回廊」は無理。せいぜい「白骨回廊」が出来上がるだけだ。
次はイラク問題。駐留米軍が現在行っている治安維持活動を、編成が完了に近づいている新生イラク軍が引き継ぐことは規定の事実だが、これがすんなりいくかどうかだ。駐イラク多国籍軍治安移行部隊司令官のジェームズ・デュビック米陸軍中将は9日、米下院軍事委員会の公聴会で証言し、米地上部隊によるイラクでの治安維持任務が「09年半ばまでにほぼ完了する」と証言。
同司令官はまた、イラク軍への治安維持任務の移行が09年の第1四半期から開始され、2012年には完全移行が達成される、と断言した。米陸軍高官がイラク治安維持任務の終了見通しについて言及したのは初めて。米国の次期大統領が誰になるにせよ、4000人以上の戦死者を出している「テロとの戦い」の最前線であるイラクにおける米軍の軍事行動が12年には終わるということだ。
国際テロ組織アルカイダ指導者のビンラディン、ザワヒリ副官の行方はようとして判明しておらず、その殺害もしくは拘束にブッシュ政権は最後の努力を注ごうが、次期大統領も頭を悩ますことは避けられない。米国をはじめとするG8首脳はこの21世紀の犯罪について共同歩調を取らなければならない。
北朝鮮が核計画申告書を提出し、これを受けてブッシュ大統領が6月26日、北朝鮮に対する経済制裁を撤回し、「テロ支援国家」指定を解除する手続きに入ったのに対し、「悪の枢軸」のもう一方の片割れであるイランの核問題は進展薄。ライス米国務長官は10日、ミサイル実験を9日実施したイランに対し、「われわれは米国や同盟国の権益を守る」として、「イランの脅威を防ぐ手段」として、ミサイル防衛(MD)網の整備などに努める考えを改めて強調。
グルジア訪問の際の記者会見で語ったもので、AP通信によると、ライス長官はMDが運用されることになれば、「イランのミサイルは役に立たなくなるだろう」と述べ、MDの意義を指摘。また、フラトー大統領副報道官は同日の記者会見で、「ウラン濃縮と挑発的な実験は、イラン国民をより孤立させるだけであり、中止するよう求める」と語った。無論、イランが「はいそうですか」と応ずる気配はさらさらい。要するに、米大統領選を控え、中東情勢は、日々の推移はあるものの、突破口を開ける能力を持った主人公がいないという状況だ。すべてはバラク待ち、もしくはマケイン待ちといったところだ。
中東情勢7日から11日までの北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)。議長を務める福田康夫首相にとっては、政権浮揚をかけた真剣勝負の檜舞台。原油や食料の高騰という国際的危機の打開に向け討議をいかに主導し、強いメッセージを打ち出し得るのか。北朝鮮の日本人拉致問題について、議長総括には当然盛り込まれるだろうが、特別文書としてG8(主要8カ国)の総意として北鮮へ圧力をかけることができるのか。
かつて、当該国の最高指導者が、国の命運をかけて敵対国の最高指導者と膝詰め談判したり、同盟・枢軸国同士の支配者が、それぞれ仲間内の秘策を練ることが可能な時代があった。「巨頭会談」「頂上会談」という言葉が、文字通り並ぶ者なき巨頭同士の話し合いであり、実権を握っていると自他ともに認める最高権力者同士の激突の場であった時代があったのである。
この意味では、第2次大戦後終結に向けた連合国間の協調態勢のありよう、戦後の道筋を定めたルーズベルト、チャーチル、スターリンのテヘラン会談(1943年)は、まさに「巨頭会談」であり「頂上会談」である。彼らの足取りは、良くも悪くも歴史として刻み込まれ、永久に不滅である。いつの頃からか、「巨頭会談」も「頂上会談」も使われなくなった。そしてサミットの時代となる。主要国間の紛争解決の手段としての戦争が消えて久しく、もはや巨頭の存在も、頂上に頼ることも必要なくなったからだろう。
あらゆる情報が瞬時にして世界中を駆け巡る時代。政治家の私生活から性癖、そのたもろもろまで、いながらにしてお茶の間どころか自分の机の上で知ることができる。政治家の周囲から、神秘性、カリスマ性が取り払われ、単なるエンターテインメントの一手段でしかなくなる。各国の政治とも、官僚がつくり出す書類のなれの果てでしかなくなった。どれもが予想の範囲内となる。
しかし、これだけは言えるだろう。互いに膝をつき合わせて、直接目と目を合わせて話し合うことは、こういった時代でも絶対に必要だ。並ぶものなき不滅の政策・方針を紡ぎ出す必要は、少なくとも主要国間で民主主義が成熟した現在では、もはやあり得ないが、「同じ釜の飯を食った」間柄として、余計な摩擦、意見の相克を回避することが可能だからである。サミットが、「テレビ会議」にとって代わられることはないだろう。
で、議長の大役に当たる福田首相。父親の故赳夫元首相は1979年、故大平正芳元首相に自民党総裁選で敗れ、日本で初開催の東京サミットを目前に政権を追われた。「首相はサミットを成功させることで、父の無念を晴らしたいという思いが強い」と指摘する向きもある。
幕開けを翌々日に控えた5日は父の13回目の命日だが、首相を駆り立てているのは「情」だけではない。その一方で、与党内では、サミットを花道として、次期衆院選は「ポスト福田で」という空気が暗黙の了解として漂っているともいわれる。
また、拉致問題は、米国が北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除に踏み切り情勢が変わった。拉致問題で、サミットとして何らかの協調態勢が取れなければ、福田首相の指導力は地に落ちる。
洞爺湖サミット
