2008年11月アーカイブ

 アラブ・イスラエル全面戦争の最後となった第4次中東戦争から35年。当時のアラブ、イスラエルの国家指導者で今も存命中なのは、リビアの最高指導者カダフィ大佐のみ。この間の画期的な出来事は、4次にわたる全面戦争の中核となったエジプトがイスラエルと平和条約を締結、2度と全面戦争が起こらなくなった点。次が、ヨルダン川西岸とガザ地区にパレスチナ暫定自治が敷かれ、パレスチナ自治政府が誕生したこと。全世界的な観点で見れば、ソ連邦が崩壊し米ソ冷戦構造が崩れ去ったことが背景にある。

 さらに東に視点を移せば、1973年の第4次中東戦争から6年後の79年、イランでイスラム革命が勃発しパーレビ王政が崩壊。その年の12月、ソ連軍がアフガンに軍事侵攻し、今の南西アジアをめぐる混乱の原因をつくり上げた。イスラム革命の湾岸波及を恐れた欧米は、革命イランとするどく対峙(たいじ)していたイラクを支援し、アフガンではその後のタリバンの基礎となるイスラム反政府勢力を後押し。そして湾岸のクウェート侵攻したのは、イランではなく欧米の支援したフセイン・イラク政権だった。

 アフガンに派兵した旧ソ連は、10年にわたり駐留を続けたが治安回復・統治に失敗し1989年に兵を完全に引き上げ、その2年後の91年12月、音をたてて崩れ去る。アフガンはその後も混乱が続き、イスラムを名乗る軍閥が割拠、その中で、パキスタンの支援を受けたイスラム原理主義勢力タリバンが政権を握る。ソ連邦崩壊の直前、クウェートを占領し得意の絶頂にあったフセイン・イラク政権に対し、欧米は派兵で応じて湾岸危機・戦争が起こり、今も続くイラク戦争を形づくった。

 そして発生したのが、21世紀前半の紛争の有り様を象徴する2001年9月11日の米同時多発テロ。アラブ・イスラエル紛争、パレスチナ問題の陰に隠れてその全容がつかみ難かったイスラム原理主義の狂信的な有り様が、初めて全世界に示された。ブッシュ米政権は、報復として同テロの元凶、国際テロ組織アルカイダ指導者ビンラディンをかくまっているアフガンを空爆、政権の座にあったタリバンを放逐して、現在のカルザイ政権を誕生させたが、アフガンは依然として破綻国家のままだ。ビンラディン逮捕・殺害もまだ。

 パレスチナに目を転ずれば、2007年6月、自治政府の挙国一致内閣で政権の一翼を担っていたイスラム原理主義組織ハマスが、ガザ地区を武装占領し挙国一致内閣は崩壊、ガザのハマスとヨルダン川西岸を実効支配するパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの2派併存となった。ファタハの主導するアッバス議長以下の自治政府を、世界は正統政権とみなしているが先行きはそれこそ不透明だ。ここでも見え隠れするのはイスラム原理主義の影である。

 そして2009年1月、共和党のブッシュ政権に代わり民主党のオバマ政権が米国で誕生する。第4次中東戦争は、ベトナム戦争のさなかにあったニクソン共和党政権。イラン革命は、民主党のカーター政権下で起こった。カーター政権に代わり誕生したレーガン共和党政権は、当時のイラクのフセイン政権を無条件で支援し、アフガンのイスラム反政府勢力に対しては、スティンガーミサイルすら供与した。レーガン政権に代わるブッシュ(父親)政権は、湾岸危機・戦争でこれを軌道修正したが、一期で倒れた。

 続くクリントン政権は、下半身問題を抱えながらも史上最高の好景気に支えられ2期をまっとうしたが、アルカイダ台頭の予兆を察知しながらも優柔不断の対応を取り続け、結果的に米同時多発テロを招いてしまう。ブッシュ(息子)政権は、いわばその尻ぬぐいとしてイラク戦争に踏み切ったが、4000人以上の米兵戦死を抱え込み、国民の間でつくづく飽きられてオバマ民主党政権に座を譲ることになってしまった。

 オバマ次期政権は、「テロとの戦い」は完遂するとしているが、対話にも道をあけるという。強硬派こそ譲歩できるという政治の鉄則から見ると果たしてどうなのだろうか?

 11月4日の米大統領選で、民主党大統領候補のバラク・オバマ上院議員(47)がジョン・マケイン共和党大統領候補を下して歴史私的な勝利。米史上初の黒人大統領誕生を決めた。オバマ次期米大統領は6日、2009年1月20日に発足する新政権の首席補佐官にユダヤ系のラム・エマニュエル民主党下院議員(48)を指名したと正式発表。同次期大統領は声明で「懸案を解決する能力で彼の右に出る者はいない」として、人事や政策立案、議会との折衝を担う政権の要として適任だとした。

 エマニュエル氏は、オバマ次期大統領と同じイリノイ州選出で、下院当選4回。クリントン前大統領の上級顧問を務め、ホワイトハウスの実務を熟知していることや、投資銀行勤務の経験から経済にも明るいことが首席補佐官起用の決め手となった。それとともに、就任式までの政権づくりの透明性を維持するとして、政権移行PRサイト、発足させた。同サイトの主要議題は、1)経済の再活性化2)イラク戦争の終結3)全国民への福利厚生の付与4)米国を守る5)米国の世界的な指導力の再始動―となっている。

 オバマ次期大統領の最大の課題は、レーガン政権からブッシュ現政権まで連綿と続いた「減税と財政支出の削減、規制緩和によって経済成長を促すというレーガノミクスの流れ」をどう変えて、1920年代の世界大恐慌以来という世界的な金融危機を克服していくかだ。少なくとも米国発の世界不況は是が非でも阻止したいところだろう。自国の問題を解決できない国家が、世界のリーダーとして信頼を得ることなど不可能だからである。これまでのようなムードでは、実利を追うことなどできはしない。

 かつて、ニューディール政策を掲げ当選した民主党のルーズベルト大統領は、大型公共投資など政府の積極介入によって、世界大恐慌の泥沼に沈んでいた米国を回復させた。オバマ次期大統領の選挙綱領にも、1500億ドルの代替エネルギー開発投資や、600億ドルのインフラ投資による雇用創出などニューディールを意識した公約が並ぶ。

 オバマ次期大統領は公共投資以外にも、中・低所得者向け減税や国民皆保険の実現など弱者に手厚い政策を掲げ、ウォール街の金融規制の強化も主張している。その狙いは、ルーズベルト政権を源流に戦後主流となった「大きな政府」の復活を目指していると言ってよいだろう。この観点からすれば、オバマ次期政権は、マケイン陣営が喝破したごとく、文字通り「社会主義的」である。そして、米国民は、これを「変革」というスローガンの下に受け入れたわけだ。

 08年度の米財政赤字は、イラク戦費やブッシュ現政権の景気対策により、4548億ドルと過去最大。今後、金融機関への公的資金注入に加え、自動車産業の救済や、追加景気対策で大盤振る舞いを続ければ、財政赤字は膨張せざるを得ない。そしてこれは、世界の基軸通貨ドルへの不信を招き、長期金利が急伸し米国から資金が逃げ出す悪循環に陥る公算もなきにしもあらず。

 今大統領選に関する米CNNの出口調査では、有権者の62%が「経済」を最大争点と答え、「イラク戦争」は10%にとどまった。事前の世論調査で示されたオバマ氏の経済運営への高い信頼度が、投票行動に反映された格好だ。オバマ、マケイン両氏の支持率が各世論調査で拮抗し、マケイン氏がリードした調査もあった選挙戦終盤の9月中旬に、米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻。金融危機の深刻化はマケイン陣営には大きな誤算で、初の黒人大統領誕生の原動力となった点は否めない。

 経済によってホワイトハウス入りし、その経済によってホワイトハウスの主の座を追われるかもしてない―オバマ次期大統領は、実に重い課題を担っているのである。

WASHINGTON - Barack Obama was elected the nation's first black president Tuesday night in a historic triumph that overcame racial barriers as old as America itself.

The 47-year-old Democratic senator from Illinois sealed his victory by defeating Republican Sen. John McCain in a string of wins in hardfought battleground states - Ohio, Florida, Virginia and Iowa.

A huge crowd thronged Grant Park in Chicago to cheer his improbable triumph and await his first public speech as president-elect

 8年間続くブッシュ共和党政権後の米国の招来を占う大統領選が4日投開票され、民主党のバラク・オバマ大統領候補が圧倒的多数で歴史的な勝利を決めた。47歳になる上院議員のオバマ氏の当選で、米史上初の黒人大統領の誕生となる。

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