【米大統領選】21世紀型ニューディールは果たして成功するか?―オバマ当選で「大きな政府」にシフト
11月4日の米大統領選で、民主党大統領候補のバラク・オバマ上院議員(47)がジョン・マケイン共和党大統領候補を下して歴史私的な勝利。米史上初の黒人大統領誕生を決めた。オバマ次期米大統領は6日、2009年1月20日に発足する新政権の首席補佐官にユダヤ系のラム・エマニュエル民主党下院議員(48)を指名したと正式発表。同次期大統領は声明で「懸案を解決する能力で彼の右に出る者はいない」として、人事や政策立案、議会との折衝を担う政権の要として適任だとした。
エマニュエル氏は、オバマ次期大統領と同じイリノイ州選出で、下院当選4回。クリントン前大統領の上級顧問を務め、ホワイトハウスの実務を熟知していることや、投資銀行勤務の経験から経済にも明るいことが首席補佐官起用の決め手となった。それとともに、就任式までの政権づくりの透明性を維持するとして、政権移行PRサイト、発足させた。同サイトの主要議題は、1)経済の再活性化2)イラク戦争の終結3)全国民への福利厚生の付与4)米国を守る5)米国の世界的な指導力の再始動―となっている。
オバマ次期大統領の最大の課題は、レーガン政権からブッシュ現政権まで連綿と続いた「減税と財政支出の削減、規制緩和によって経済成長を促すというレーガノミクスの流れ」をどう変えて、1920年代の世界大恐慌以来という世界的な金融危機を克服していくかだ。少なくとも米国発の世界不況は是が非でも阻止したいところだろう。自国の問題を解決できない国家が、世界のリーダーとして信頼を得ることなど不可能だからである。これまでのようなムードでは、実利を追うことなどできはしない。
かつて、ニューディール政策を掲げ当選した民主党のルーズベルト大統領は、大型公共投資など政府の積極介入によって、世界大恐慌の泥沼に沈んでいた米国を回復させた。オバマ次期大統領の選挙綱領にも、1500億ドルの代替エネルギー開発投資や、600億ドルのインフラ投資による雇用創出などニューディールを意識した公約が並ぶ。
オバマ次期大統領は公共投資以外にも、中・低所得者向け減税や国民皆保険の実現など弱者に手厚い政策を掲げ、ウォール街の金融規制の強化も主張している。その狙いは、ルーズベルト政権を源流に戦後主流となった「大きな政府」の復活を目指していると言ってよいだろう。この観点からすれば、オバマ次期政権は、マケイン陣営が喝破したごとく、文字通り「社会主義的」である。そして、米国民は、これを「変革」というスローガンの下に受け入れたわけだ。
08年度の米財政赤字は、イラク戦費やブッシュ現政権の景気対策により、4548億ドルと過去最大。今後、金融機関への公的資金注入に加え、自動車産業の救済や、追加景気対策で大盤振る舞いを続ければ、財政赤字は膨張せざるを得ない。そしてこれは、世界の基軸通貨ドルへの不信を招き、長期金利が急伸し米国から資金が逃げ出す悪循環に陥る公算もなきにしもあらず。
今大統領選に関する米CNNの出口調査では、有権者の62%が「経済」を最大争点と答え、「イラク戦争」は10%にとどまった。事前の世論調査で示されたオバマ氏の経済運営への高い信頼度が、投票行動に反映された格好だ。オバマ、マケイン両氏の支持率が各世論調査で拮抗し、マケイン氏がリードした調査もあった選挙戦終盤の9月中旬に、米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻。金融危機の深刻化はマケイン陣営には大きな誤算で、初の黒人大統領誕生の原動力となった点は否めない。
経済によってホワイトハウス入りし、その経済によってホワイトハウスの主の座を追われるかもしてない―オバマ次期大統領は、実に重い課題を担っているのである。
米大統領選

コメントする