2009年4月アーカイブ
北東アジアを舞台に再び北朝鮮のミサイル危機。北朝鮮は2月24日、実験通信衛星「光明星(クァンミョンソン)2号」を運搬ロケット「銀河(ウンハ)2号」で打ち上げると発表し、国際機関に対し4月4―8日の間に発射すると通告。「平和目的」と称するこのミサイルは既に、発射台への移動を開始した。表面的には、オバマ米政権を米朝2国間交渉へ引きずり込み、韓国の李明博政権に対北強硬策を断念させるのが狙いだろう。
ミサイル発射が秒読み段階に入ったのを受けて、日本政府は27日午前、国会内で安全保障会議(議長・麻生太郎首相)を開き、北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」名目で長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を発射した際の対処方針を決定。これに基づき浜田靖一防衛相は、ミサイルが日本の領土や領海に落下する場合に備え、自衛隊法82条2の3項に基づく「破壊措置命令」を発令した。2003年にミサイル防衛(MD)の整備が始まって以来、実際に「破壊措置命令」が発令されるのは初めて。
地上配備型パトリオット・ミサイル3の首都圏移動を示す写真が新聞紙面に踊る中で、遂には、東京都の石原慎太郎知事が27日の定例記者会見で、「こんなことを言うと怒られるかもしれないが、変なものが間近に落ちるなんてことがあった方が、日本人は危機感というか、緊張感を持つんじゃないかな」という一種の極論めいた警句まで登場。字面だけで見ると、日本が臨戦態勢に入った感がする。
他方、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の日米韓首席代表は27日、ワシントンで会談し、北朝鮮が発射準備を進めている長距離弾道ミサイル問題を協議。その結果、北朝鮮が通告通り4月4―8日にミサイルを発射した場合の対応について、「人工衛星」の打ち上げと主張しても国連安全保障理事会決議違反として、直ちに国連で取り上げるべきだとの認識で一致した。北朝鮮の思惑通りオバマ政権の目を引くことには成功したが、米朝2国間交渉も、李明博政権の対北政策変更も当然ながら引き出すことはできない。
だとするなら、今回のミサイル危機の伏線は何か。健康問題がうんぬんされる金正日北朝鮮総書記の、国威発揚策―これしかあるまい。この4月9日の最高人民会議では、同総書記の第3期指導体制がスタートする。「平和目的」と称する「衛星」運搬用ミサイルはその直前に発射されるわけで、事実上、金総書記の指導体制強化に向けた国威発揚の手段となる。北朝鮮テレビで、ロボットのようなアナウンサーががなりたてる、時代錯誤めいた甲高い音調のニュース朗読の格好の材料となるわけだ。>/p>
北朝鮮は06年10月、最初で最後の核実験を行い「核保有国」への仲間入りを果たした。が、再核実験はもはや無理。国際社会での孤立化をさらに招き、核兵器に使用できるわずかなプルトニウムを使い果たしてしまうからだ。だが、ミサイル発射だけならこのリスクを回避できる。「核の切り札」を保持できると同時に、金総書記にとっては、国内の体制強化につながるというメリットだけを享受できる。
こう見てくると、発射される可能性が極めて高い北朝鮮のミサイルは、実は北朝鮮の自国民に向けて発射されるということになる。
北朝鮮ミサイル
