米大統領選をこの11月に控え、イラク情勢をはじめとする中東情勢は実に茫洋としてつかみどころがなくなった。ブッシュ政権は既にレームダックだし、次がバラクになるのかマケインになるのかは、実は不倶戴天の敵イランも含めて全中東の独裁者、政治家が注視するところだからだ。
まずパレスチナ問題。中東和平に向けた日本とイスラエル、パレスチナ、ヨルダンによる「第3回閣僚級4者会合」が2日、外務省飯倉公館で開かれた。日本が提唱する和平支援策「平和と繁栄の回廊」構想を2009年早期に着手することで合意し、中東の安定に向け4者が連携を深めていくことで一致した。
出席したのは高村正彦外相、エズラ・イスラエル環境相、パレスチナ自治政府のアブドラ労働相、バシール・ヨルダン外相。会合で高村外相は「中東和平には、イスラエルと共存共栄するパレスチナ国家建設が欠かせない」と述べ、同構想の実現を通じたパレスチナの自立の必要性を強調。
「平和と繁栄の回廊」構想とは、現在パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの勢力下にあるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に農産業団地を建設し、周辺諸国との物流活性化でパレスチナの自立を図るもので、日本が政府開発援助(ODA)で支援する。北海道洞爺湖サミットで、この4者会合の結果は報告されている。
だが、わざわざファタハ支配下のヨルダン川西岸とことわらざるを得ないところにパレスチナ問題が置かれた抜き差しならない状況がある。もう一方のパレスチナ自治区であるガザ地区は、ファタハを武力で追放したイスラム原理主義組織ハマスが実効支配しているからだ、パレスチナ人自身が自助努力でこのファタハとハマスの抗争に何とか区切りをつけない限り、とてもではないが「平和と繁栄の回廊」は無理。せいぜい「白骨回廊」が出来上がるだけだ。
次はイラク問題。駐留米軍が現在行っている治安維持活動を、編成が完了に近づいている新生イラク軍が引き継ぐことは規定の事実だが、これがすんなりいくかどうかだ。駐イラク多国籍軍治安移行部隊司令官のジェームズ・デュビック米陸軍中将は9日、米下院軍事委員会の公聴会で証言し、米地上部隊によるイラクでの治安維持任務が「09年半ばまでにほぼ完了する」と証言。
同司令官はまた、イラク軍への治安維持任務の移行が09年の第1四半期から開始され、2012年には完全移行が達成される、と断言した。米陸軍高官がイラク治安維持任務の終了見通しについて言及したのは初めて。米国の次期大統領が誰になるにせよ、4000人以上の戦死者を出している「テロとの戦い」の最前線であるイラクにおける米軍の軍事行動が12年には終わるということだ。
国際テロ組織アルカイダ指導者のビンラディン、ザワヒリ副官の行方はようとして判明しておらず、その殺害もしくは拘束にブッシュ政権は最後の努力を注ごうが、次期大統領も頭を悩ますことは避けられない。米国をはじめとするG8首脳はこの21世紀の犯罪について共同歩調を取らなければならない。
北朝鮮が核計画申告書を提出し、これを受けてブッシュ大統領が6月26日、北朝鮮に対する経済制裁を撤回し、「テロ支援国家」指定を解除する手続きに入ったのに対し、「悪の枢軸」のもう一方の片割れであるイランの核問題は進展薄。ライス米国務長官は10日、ミサイル実験を9日実施したイランに対し、「われわれは米国や同盟国の権益を守る」として、「イランの脅威を防ぐ手段」として、ミサイル防衛(MD)網の整備などに努める考えを改めて強調。
グルジア訪問の際の記者会見で語ったもので、AP通信によると、ライス長官はMDが運用されることになれば、「イランのミサイルは役に立たなくなるだろう」と述べ、MDの意義を指摘。また、フラトー大統領副報道官は同日の記者会見で、「ウラン濃縮と挑発的な実験は、イラン国民をより孤立させるだけであり、中止するよう求める」と語った。無論、イランが「はいそうですか」と応ずる気配はさらさらい。要するに、米大統領選を控え、中東情勢は、日々の推移はあるものの、突破口を開ける能力を持った主人公がいないという状況だ。すべてはバラク待ち、もしくはマケイン待ちといったところだ。
中東情勢
